コーヒーをドリップしよう。必要な道具から淹れ方まで完全解説!
【2019-02-02】
コーヒー豆からコーヒーを淹れよう
美味しいコーヒーを飲みたいと思ったら、缶コーヒーやインスタントコーヒーではなく、コーヒー豆からコーヒーを淹れたいと思いますよね。でも、コーヒー豆からコーヒーを淹れるというと、少しハードルが高く感じるかもしれません。この記事では、初めてコーヒー豆からコーヒーを淹れたいと思ったあなたへ、必要な道具や基本的なドリップ方法、コーヒーの楽しみ方について解説していきたいと思います。
いつものコーヒーをランクアップしよう
コーヒーをまったく淹れたことがない人でも、缶コーヒーやインスタントコーヒー、コンビニコーヒーを毎日のように飲んでいるという方は多いかと思います。コーヒーを飲む理由は、目覚ましだったり、息抜きのお供だったり、単純に習慣だったりなど人によって様々ですが、同じコーヒーを飲むのなら、できるだけ美味しいコーヒーを飲みたいですよね。
品質の良いコーヒー豆を使って淹れるコーヒーは、チェーン店やコンビニ、市販のコーヒーとは比較にならないくらい味わいに差があります。いつもの缶コーヒーやインスタントコーヒーを美味しいコーヒーに変えるだけで、朝の時間やブレイクタイムがより一層贅沢な時間になるでしょう。
自宅でコーヒーを淹れるメリット
自宅でコーヒーを淹れることには、様々なメリットがあります。ほとんどの場合、品質の良いコーヒー豆を使用してコーヒーを淹れても、外でコーヒーを購入して飲むよりも安価です。味わいもチェーン店やコンビニコーヒー、缶コーヒーよりも格段に美味しいですし、コーヒー豆を数種類ストックしておけば、毎日の気分に合わせて好きなコーヒーを楽しむことができます。
自分好みに味を微調整出来ることも、自宅でコーヒーを淹れる醍醐味の一つです。刺激がほしいときには深煎りのコーヒー豆を細挽きにして濃い目にしたり、ゆったりと楽しみたいときは、香りの良い浅煎りのコーヒー豆を中挽きで、といったように焙煎度や挽き具合、抽出量を自由に選択して楽しむことができるので、同じコーヒー豆でも色々な表情を楽しむことができます。
そして何より、コーヒーを淹れている時間は落ち着きます。お湯を注がれたコーヒー粉の膨らむ姿や立ち上る香りは、心をリラックスさせてくれます。自宅でコーヒーを淹れると、淹れ始めから飲み終わるまで、ゆったりとした時間を楽しむことが出来るでしょう。
美味しいコーヒーを淹れるための”前提条件”
コーヒーを淹れる前に予め知っていてい欲しいのが、品質の良いコーヒー豆を使用してコーヒーを淹れることがとても大事だということです。これについては選び方などを後ほど詳しく解説していきますが、一部の特殊なコーヒー豆を除けば、とても品質の良いコーヒー豆でも通常のグレードのものと比べて非常に高額ということはありませんので、費用面はあまり気にしなくても大丈夫です。
スタンダードな”プアオーバー”でコーヒーを淹れよう
コーヒーを淹れるというと、大半の人がイメージするのは、ドリッパーにセットされたコーヒー粉に上からお湯を注いでコーヒーを淹れる”プアオーバー”ではないでしょうか。ここからは、最もスタンダードな淹れ方であるプアオーバーでのコーヒーのドリップについて解説していきます。
コーヒーを淹れるために必要なもの
プアオーバーでコーヒーを淹れるためには、まず最低限、以下のものが必要です。
- コーヒー豆(粉)
- コーヒーミル
- コーヒーポット
- ドリッパー(フィルター)
- サーバー
- マグカップ・コーヒーカップ
意外と必要なものが多いな・・・、と思った方もいるでしょうか。これらは全てプアオーバーでコーヒーを淹れるために必要なものとなりますので、コーヒーを淹れると決めたら思い切って用意しましょう。次に、それぞれの選び方を詳し解説していきます。
必需品①:コーヒー豆(粉)
美味しいコーヒーを飲みたいなら、コーヒー豆が一番重要です。美味しいコーヒーは、美味しいコーヒー豆からしか淹れることはできません。せっかく自宅でコーヒーを淹れるのなら、味も良いコーヒーを飲みたいですよね。そのためにはまず美味しいコーヒー豆、つまり品質の良いコーヒー豆を選ぶようにしましょう。
はじめての方でも簡単に品質の良いコーヒー豆を選ぶポイントがあります。それは、”スペシャルティコーヒー”と呼ばれるコーヒー豆を選ぶことです。コーヒー豆は品質によってグレードがいくつかに分類されているのですが、その中でも品質が良いコーヒーをスペシャルティコーヒーと呼称します。厳密に言うと、単純に品質の良いコーヒーのことをスペシャルティコーヒーと呼ぶわけではないのですが、スペシャルティコーヒー=美味しい・品質の良いコーヒーと考えて大丈夫です。
スペシャルティコーヒーにも更にグレードが存在し、単純なスペシャルティコーヒーと呼べる品質のボーダーを超えたものから、”カップオブエクセレンス(COE)”という厳格な国際品質審査会で入賞を果たしたコーヒー豆など幅があります。どれを飲んでも美味しいですが、COEのコーヒー豆などが手に入る機会があれば、ぜひ飲んでみると良いでしょう。
逆に、スーパーでパッケージされて売っているコーヒー豆や、輸入食品店で売っているコーヒー豆はオススメしません。これらは殆どの場合スペシャルティコーヒーではありませんし、そもそもいつ焙煎したものかも分からないため、鮮度が低く、これらのコーヒー豆を使用して淹れたコーヒーは味わいも良くないでしょう。コーヒー豆を購入するならコーヒー豆の専門店で購入するようにしましょう。
コーヒー豆の専門店が近所にない場合は、ネット通販でも購入しても構いません。その場合は、なるべく焙煎したてを発送してくれるお店で購入するようにしましょう。ほとんどの場合、注文後に焙煎して発送してくれるので、スーパーや輸入食品店のコーヒー豆よりも新鮮です。
スペシャルティコーヒーを取り扱うコーヒー豆の通販サイトの中から、下記にいくつかピックアップしてみました。土居珈琲(ドイコーヒー)など、初回購入向けのセット販売を行っているお店もありますので、どのコーヒー豆を選んで良いかわからない方は、まずはそちらを試してみるのが良いでしょう。
また、可能であればコーヒー豆は挽いた状態のもの、つまり粉ではなくて、豆の状態のままで購入しましょう。これは、コーヒー豆が挽かれて粉状になると表面積が増えて、その分酸化(品質の劣化)が早くなるためです。豆の状態と比較して日持ちもしませんので、購入するなら出来る限り豆の状態のものをオススメします。
- コーヒー豆は品質の良い”スペシャルティコーヒー”を選ぶ
- なるべく、注文後に焙煎してくれるお店で購入する
- コーヒー粉は酸化が早く進むので、コーヒー豆のままの状態で購入する
必需品②:コーヒーミル
コーヒー豆をドリップできる状態にするためには、コーヒー豆を挽くためのコーヒーミルが欠かせません。お店でコーヒー豆を挽いてもらう場合は必要ありませんが、前述したとおり、コーヒー豆は粉の状態だと長期保存に向きませんし、品質の劣化も早くなります。毎日美味しいコーヒーを飲みたいなら、コーヒーミルも必需品となるでしょう。
コーヒーミルはまず大きく分けて、電動と手動の2種類があります。電動ミルのほうが価格が高く、手動ミルのほうが比較的安価ですが、購入するなら電動ミルをオススメします。理由は単純で、電動ミルのほうが、手動のミルよりも均等にコーヒー豆を挽けるためです。
美味しいコーヒーを淹れるための条件の一つとして、コーヒー豆の粒度があります。粒度が均等であるほど、お湯を注いだときの粉一粒一粒から抽出されるコーヒーの成分も均等になるため、味にムラのないコーヒーを淹れやすくなります。そしてコーヒー豆を常に均一に挽くためには、人の手でハンドルを回してコーヒー豆を挽く手動ミルよりも、電源一つで一定の精度でコーヒー豆を挽くことが出来る電動ミルのほうが向いているのです。そのため、買うのであれば電動ミルがオススメです。
また、電動ミルは豆を挽く刃の形状によってプロペラ式(ブレードグラインダー)、カット式(フラットカッター)、コニカル式(コーン式)の3種類に分けられます。これらの比較については、コーヒーミルの選び方のページで詳しく紹介しているので参照してみて頂ければと思いますが、結論だけ言うのであれば、カット式(フラットカッター)かコニカル式(コーン式)の電動ミルを選ぶのが良いでしょう。
電動のコーヒーミルは安くはありません。しかし、そう何度も買い換えるものではありませんし、良い製品であれば長く使用できます。安いものを買って中途半端にお金を消費し、味もイマイチなコーヒーを飲むよりも、はじめから良いものを購入して、長く美味しいコーヒーを楽しむことをオススメします。
- コーヒーミルは手動ではなく、電動のものを選ぶ
- 電動のコーヒーミルの中でも、カット式(フラットカッター)、コニカル式(コーン式)のものを選ぶ
必需品③:コーヒーポット
プアオーオーバーでコーヒーを淹れるなら、コーヒーポットも大事です。”やかん(ケトル)”じゃダメ?と思う人もいるかも知れませんが、プアオーバーで美味しいコーヒーを淹れるためには、お湯を細く注ぎ続けたり、すこし太く注いだり、思い通りにコントロール出来るかが重要です。一般的なやかんでは口が広すぎたり、注ぎ口が短いため、細くお湯を注ぎ続ける、といったような繊細なコントロールをすることが難しいため、専用のコーヒーポットが必要になります。
コーヒーポットの選び方については、コーヒーポットの選び方の記事で詳しく紹介していますが、基本的に手に馴染むものが一番で、絶対にコレ、というものはありません。材質、見た目、価格など、自分の優先する基準と相談して、好みのコーヒーポットを見つけて見てください。
コーヒーポットは、手に馴染むか、使いやすいかといった事が一番重要で、それがお湯を精密にコントロールすることにも繋がります。可能であれば実物を見て、触って、手に馴染むかどうかを感じてから選ぶのが良いでしょう。
ちなみに、コーヒーポットはやかんとは違うため、直接火にかけず、やかんで沸かしたお湯を移し替え、コーヒーにお湯を注ぐためだけに使用する場合も多くあります。どちらが正解ということはありませんので、自分が扱いやすい方法で使用しましょう。
コーヒーポットの中には、IHクッキングヒーター対応のものもあります。自宅がIHでコーヒーポットを直接火にかけたい場合は、IH対応のコーヒーポットを選びましょう。
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- ”やかん”ではなく、コーヒーポットを用意する
- できれば実際に触ってみて、手に馴染むものを選ぶ
- コーヒーポットは直接火にかけなくても大丈夫
必需品④:ドリッパー(フィルター)
プアオーバーでは、ドリッパーにコーヒー粉を入れて、その上からお湯を注いでコーヒーをドリップします。ドリッパーの種類は様々ですが、大きな一つ穴の空いたドリッパー、もしくは小さめの三つの穴が空いたドリッパーが主流です。主だったメーカーのドリッパーについては、主なコーヒードリッパーのメーカーについての記事も参考にしてみてください。
ドリッパーは同じ形状の物でもプラスチック、陶器、ガラス、ステンレス、銅といった材質の異なるものが販売されていることがあります。プラスチックのものは安価に手に入りますが、陶器やガラス、ステンレスのものはそれよりも少し値段が高く、銅製のドリッパーになると非常に高価になります。こだわりがなければプラスチック製のドリッパーでも構いませんが、安っぽいのが嫌だったり、材質にこだわりがある人はガラスや陶器のドリッパーを選びましょう。
ドリッパーを使用するためにはもうひとつ、ペーパーフィルターが必要です。前述したとおり、ドリッパーには穴が空いています。穴が空いたドリッパーにコーヒー粉を入れたら、コーヒー粉が漏れてしまいますよね。コーヒー粉が漏れないようにするために、ドリッパーにペーパーフィルターをセットしてからコーヒー粉を入れます。ペーパーフィルターは、名前の通り紙でできたフィルターです。消耗品で、コーヒーを淹れるたびに交換する必要があります。ドリッパーに様々な形があるように、ペーパーフィルターもドリッパーにあった形のものを使用する必要があります。
ペーパーフィルターについては、各メーカーのペーパーフィルターのまとめや、ペーパーフィルターの使いかたの紹介にて詳しく説明していますが、ペーパーフィルターはドリッパーの形とサイズに合う、白いペーパーフィルターを使用するということだけ覚えておけば良いでしょう。
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ドリッパーを使用するためにはペーパーフィルターが必要と言いましtが、例外があります。それは、金属フィルター(ドリッパー)を使用する場合です。金属フィルターとは、文字通り金属でできたフィルターで、ドリッパーの形状をしていて、ろ過部分が細かなメッシュ状のステンレスでできています。金属フィルターは、それ自体がドリッパーとフィルターを兼ねるので、ペーパーフィルターをセットする必要がありません。
金属フィルターでコーヒーを淹れると、コーヒー由来の油である”コーヒーオイル”を含んだコーヒーを淹れることが可能となります。ペーパーフィルターを使用する場合、コーヒーオイルはフィルターに吸収されてしまうのでコーヒーに含まれませんが、金属フィルターの場合はステンレスのメッシュであるため、コーヒーオイルがフィルターに吸収されることなくコーヒーに落ちて行くのです。コーヒーオイルを含んだコーヒーは、よりコーヒー本来の香りを楽しむことができる、まろやかな口当たりのコーヒーとなります。
金属フィルターの違いや特徴については、ペーパーフィルターとの違いについての記事や金属フィルターの特徴に関する記事も読んでみてください。
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- ドリッパーは大きな一つ穴、もしくは小さな三つ穴のものが主流
- ペーパーフィルターは、ドリッパーのサイズと形にあったもので、白色のものを選ぶ
- 金属フィルターは単体で使用可能(ドリッパー不要)で、コーヒーオイルを抽出することができる
必需品⑤:コーヒーサーバー
ドリッパーに入ったコーヒー粉に向かってお湯を注いだら、下に空いた穴からコーヒーが落ちていくので、それを受けるためのコーヒーサーバーも必要です。サーバーについては、コーヒーを受けられれば何でも構いませんので、無難に、ガラス容器にハンドルが取り付けられた、コーヒーサーバーとして売られている製品を使用しても良いですし、ビーカーを使用して実験気分を味わったり、あるもので済ませたいなら茶碗を使用しても良いでしょう。
ただし、どんなものをサーバーとして使うとしても、最低限ドリッパーがサーバーに安定して乗せられることは確認しておきましょう。サーバーの口が広すぎてドリッパーが乗らないかったり、逆に狭すぎて安定して乗せられないといった場合に、コーヒーを淹れる際にストレスになるからです。ドリッパーを安定して乗せられない場合は、ドリップスタンドを使用するという手もあります。
ドリップスタンドとは、ドリッパーを乗せるための道具です。ドリップスタンドの上にドリッパーを乗せ、その下にサーバーをセットして使用します。ドリップスタンドを使用すると、ドリッパーがサーバーではなくドリップスタンドに乗る形になるため、ドリッパーをサーバーに安定して乗せられない、といった課題をクリアすることが出来ます。
どうしてもサーバーにドリッパーを上手く乗せられない・・・。という場合には、ドリップスタンドの使用を検討してみましょう。
どんなものをサーバーに使用しても良いと言いましたが、できれば材質がガラスで、メモリがあるものがオススメです。理由は簡単で、材質がガラスでないと、ドリップ中に今、サーバーの中にどれくらいコーヒーが入っているのか、ひと目でわかりにくいからです。メモリは内容量をよりある程度正確に把握するためにあると良いでしょう。
- コーヒーサーバーは、コーヒーを受けることができれば何を使用しても良い
- ドリップスタンドを使用すれば、ドリッパーとサーバーの組み合わせが豊富になる
- サーバーはガラス製で、メモリが付いているものだと良い
必需品⑥:コーヒーカップ・マグカップ
コーヒーを飲むのは私達の口ですが、口までコーヒーを運んでくれるカップも忘れずに用意しましょう。大抵の家庭にはマグカップくらいあると思うので、特別こだわりがなければコーヒー用に用意する必要はないかと思いますが、せっかくならコーヒーカップで飲んでみると、雰囲気も楽しめるかもしれません。
個人的には、コーヒーをゆっくり楽しむなら、ソーサー付きのコーヒーカップがあると良いと思います。できれば一点物だと、コーヒータイムがより特別な時間になるでしょう。
オプション①:ドリップスケール
最低限必要な物は以上ですが、より美味しいコーヒーを淹れるために準備しておくと良いものがあります。ひとつめは、ドリップスケールです。
ドリップスケールは、コーヒーを淹れるために特化したキッチンスケールです。ドリップするとき、コーヒーサーバーを乗せて使用します。時間と重さを同時にはかる事が可能なので、ドリップしつつ、経過時間を見ながら、現在のコーヒーの抽出量を一目で確認することが出来ます。
コーヒーを淹れることに慣れていないうちは、感覚が掴めていないこともあり、コーヒー豆の量に対して抽出量やドリップにかける時間はバラバラになりがちです。コーヒー豆の量が一緒なのに、ドリップ時間や量が異なれば、コーヒーの味わいもブレてしまいます。ドリップスケールがあれば、初心者でも時間と抽出量が数字として一目で把握できるため、毎日味ブレの少ないコーヒーを淹れることが出来るでしょう。
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何事にも、初心者の頃の癖付けは重要です。早いうちからドリップスケールを使用し、コーヒーの抽出時間と抽出量を確認しつつドリップすることで、自分のドリップの感覚を掴むのが、美味しいコーヒーを淹れるための近道になるでしょう。
- ドリップスケールは、時間と重量を同時に見ることが出来る
- ドリップスケールを使用することで、毎日ブレのない味わいのコーヒーを淹れることができる
オプション②:温度計
もうひとつ、あると良いのが温度計です。温度計は、淹れたコーヒーの飲み頃温度を確かめるため・・・・ではなく、沸かしたお湯の温度を確認するために使用します。
コーヒーを淹れる場合、お湯は一度沸騰させます。沸騰するということは、火を止めたとき、お湯の温度はほぼ100℃ということです。コーヒーを淹れる際、お湯の温度が高すぎると、コーヒー成分が過剰に抽出されます。コーヒーの成分が過剰に抽出されると、美味しい成分だけではなく、雑味も多く抽出されてしまい、結果的にあまり美味しくないコーヒーが出来上がってしまいます。
そのため、お湯が沸騰したら一旦火を止めて、お湯を冷ます必要があります。コーヒーポットで直接お湯を沸かした場合はそのまま、やかんで沸かした場合はコーヒーポットに移し替えてから冷ましますが、逆にお湯を冷ましすぎると、今度はコーヒーの成分を抽出しにくくなってしまいます。
熱すぎず、かつ冷ましすぎないためには、お湯の温度を正確に測る必要があります。そこで温度計の出番です。冷ましている最中のお湯の温度を温度計で測ることで、コーヒーのドリップにベストな温度を捉えることが出来るようになります。
コーヒーのドリップに最適な温度ですが、これは人によって様々です。95℃が良い、と言う人もいれば、92℃が良い、85℃が良いという人もいます。ですので、コーヒーをドリップするのに最適なお湯の温度については、自分で何度も淹れて飲んで確認するのが良いでしょう。ちなみに私個人としては、お湯の温度が90℃以上では雑味が多く出るので、89℃以下、86℃以上くらいのお湯が丁度良いと思います。
最初のうちは、沸騰したお湯をコーヒーポットに注いでから、どの程度時間が経過すればどのくらいお湯の温度が下がるのか、把握するのはほぼ不可能でしょう。そのため、温度計はなるべく準備しておくことをオススメします。
- 温度計は、沸かしたお湯の温度を測るために使用する
- 適切なお湯の温度でコーヒーをドリップすることで、美味しいコーヒーを淹れる事ができる
実際にコーヒーを淹れてみよう
プアオーバーでコーヒーを淹れるための道具が揃ったら、待っていることはありません。早速コーヒーを淹れてみましょう。
お湯を沸かす
まずはお湯を沸かしましょう。水の量は多めに、淹れるコーヒーの量の2倍〜3倍程度の量を用意するのが良いでしょう。1杯140mlを淹れる場合だと、280ml〜420mlです。お湯を多めに用意するのは、コーヒーの抽出用以外に、コーヒーカップ、サーバー、ドリッパーを保温しておく分と、コーヒーポットに抽出量よりも多めにお湯を入れておくためです。
コーヒーポットにお湯を多めに入れておくのは、ドリップを安定させるためです。たとえば、140mlのコーヒーを淹れるのに、コーヒーポットの中のお湯の量が140mlだった場合、淹れ始めは問題ありませんが、淹れ終わりはコーヒーポットのお湯がほとんど無くなるため、コーヒーポットからお湯を出すために、より大きく傾かせなければなりません。また、お湯が減ると重量が軽くなるため、安定感が失われやすく、お湯を注ぎすぎたり、注ぐ場所を誤ってしまう事も考えられます。
安定したドリップをするためには、淹れ始めから淹れ終わりまで、完全にお湯をコントロールする必要があります。そのためには、コーヒーポットには抽出量よりも多くのお湯を入れて安定するようにしておき、ドリップ中のお湯の出方がなるべくブレないようします。
また、コーヒーを淹れるために使用する水は、浄水器を通した水道水(浄水)を使用します。ミネラルウォーターを使用しても美味しいコーヒーを淹れることが可能ですが、毎日自宅でコーヒーを淹れることを前提とした場合、あまりコストパフォーマンスに優れません。浄水で充分美味しいコーヒーを淹れられるので、基本は浄水で淹れるようにしましょう。
抽出器具をセットする
お湯を沸かしているうちに、コーヒーをドリップするための器具類を用意しましょう。コーヒーポット、ドリッパー、ペーパーフィルター、コーヒーサーバー、コーヒーカップを準備したら、コーヒーサーバーの上にドリッパーを乗せておきます。次にペーパーフィルターをドリッパーにセットしますが、ペーパーフィルターには凸凹した”綴じ代(接着面)”があり、これを折り込んでからドリッパーにセットします。
綴じ代は、台形ペーパーフィルターには2辺、円錐形ペーパーフィルターには1辺存在し、台形の場合は2辺の綴じ代のうち一つを裏か表のどちらかに折り込んだら、もう片方は反対側に折り込みます。円錐形の場合は1辺しかないので、裏か表どちらでも好きな方向に折り込みます。綴じ代を折らないと、ドリッパーとペーパーフィルターが密着せず、的確なドリップの妨げになるので注意しましょう。
お湯が沸いたら、全ての器具にお湯を注いでいきます。コーヒーポットにはドリップする量よりも多めのお湯を注ぎ、温度計を差し込んでフタをせずに置いておきます。フタをしないのは、はやく温度を下げるためです。外気温やあまり温度を下げたくない場合は閉じるなどして調整します。コーヒーカップとサーバーに乗ったドリッパーにもお湯を注いで保温しましょう。なお、保温できれば良いので、このときカップやサーバーが満タンになるまでお湯を注ぐ必要はありません。
コーヒー豆を準備する
コーヒーポットのお湯の温度が低くなるのを待つ間に、コーヒー豆の準備をしましょう。コーヒー豆の量は一般的に、メジャースプーンで○杯といったパターン、もしくは○グラムという2種類のパターンで量りますが、出来る限り、キッチンスケールなど重さを量れるものを使用して、グラム数で量ります。
というのも、メジャースプーンで○杯という方法だと、体積で量を測ることになるので、コーヒー豆の粒の大きさによって実際のグラム数が変わってしまうためです。また、焙煎度によってもコーヒー豆一粒あたりの水分量が変わるので、重さも変わります。深煎りのコーヒー豆ほど内部の水分が蒸発しているので、一粒あたりの重量が軽くなっており、これも実際のグラム数に影響を及ぼします。
これらのことから、品種、焙煎度の異なるコーヒー豆で、毎回正確にコーヒー豆の使用する量を量るためには、メジャースプーンを使用した体積ベースの測り方ではなく、重量ベースでコーヒー豆の使用量を量ることをオススメします。前述したドリップスケールがひとつあれば、コーヒー豆の量も正確に量るために使用できるので非常に有用です。
コーヒー豆を必要な分だけ用意したら、コーヒーミルで挽いていきます。プアオーバーでコーヒーを淹れる場合は、コーヒー豆の粗さは中挽きにするのが良いでしょう。使用するコーヒーミルのダイヤルを中挽き用に合わせて、コーヒー豆を挽きます。もし、コーヒーミルがない場合で、挽いたコーヒー豆を購入する場合は、同じく中挽きのものを購入してください。
コーヒー豆を量るのにドリップスケールやキッチンスケールを使用した場合は、この後のドリップに備えて保温中のコーヒーサーバーをスケールに乗せておきます。
コーヒーをドリップする(円錐型ドリッパーの場合)
コーヒーポットのお湯が希望の温度まで下がったら、いよいよドリッパーにお湯を注いでいきましょう。コーヒーポットの扱いになれていない場合は、ポットをどれくらい傾けると、お湯がどれくらい出てくるのかを確認するために、シンク(流し台)に向かってお湯の出る具合を確認してみても良いでしょう。
1回目は、コーヒー粉を蒸らすためのお湯を注ぎます。静かにゆっくり、ドリッパーの側面にお湯がかからないようにしつつ、全体を満遍なくお湯で満たします。ドリップスケールを使用している場合、およそコーヒー豆の使用量と同等の重さを示すまで、お湯を注げばちょうど良いくらいになります。コーヒー豆の量が14gなら、お湯の量は14ml(1g=1ml)という感じです。ドリップスケールがない場合は、ゆっくり注いでいって、サーバーにコーヒーが滴下し始めたらストップするようにしましょう。
規定のお湯を注いだら、20秒〜30秒ほどそのままにして、コーヒー粉を蒸らします。コーヒー粉を蒸らすことで、この後にお湯を注いだときにコーヒーの成分が抽出されやすくなります。ドリップスケールを使用している場合、このときに一旦重量を0に戻しておくと、その後の抽出量が分かりやすくなります。蒸らしの時間が経過したら、コーヒーを抽出するためのお湯を注いでいきます。
お湯は、ドリッパーの真ん中から注ぎ始めます。このとき、なるべく低い位置で、ドリッパーに対して直角になるようにお湯を注ぐと、コーヒー粉が暴れず、かつ狙ったポイントにお湯を的確に注ぐことが出来ます。お湯は”つまようじ”くらいの細めを意識して、スッとなめらかな直線になって落ちるように注ぎます。ただ、最初から思い通りにお湯を注ぐのは難しいので、意識することから始めて、徐々に自在にコントロール出来るようになりましょう。
真ん中から注ぎ始めたら、”の”の字を描くようにしてコーヒー粉の上を巡ります。このとき、ドリッパーの側面にお湯を注いでしまうと、コーヒー粉の中を通過せずにお湯がサーバーに流れていってしまうので、側面に寄り過ぎないように注意します。”の”の字を何度も描くようにお湯を注ぎ続けて、欲しい量のコーヒーが抽出できたら、ドリッパー内のコーヒーが全て落ちきる前にドリッパーを外します。これは、ドリッパーの内部に溜まった”アク”がサーバーに落ちてくるのを防ぐためです。ドリッパーを外して、サーバーのコーヒーをカップに注いだらドリップ完了です。
コーヒーの抽出量については決まりはありませんが、コーヒー豆12g〜14gで140mlほどのコーヒーをドリップするのが一般的です。好みに合わせて、濃い目が良ければコーヒー豆の量を増やしても良いですし、逆にお湯の量を増やしても良いでしょう。
円錐形ドリッパーを使用する場合は前述の様にお湯を注ぎますが、台形ドリッパーでコーヒーを淹れる場合、円錐形ドリッパーを使用する場合とお湯の注ぎ方が少々異なります。次は、台形ドリッパーを使用する場合のお湯の注ぎ方について解説します。
コーヒーをドリップする(台形型ドリッパーの場合)
蒸らしの工程までは円錐形ドリッパーと同じですが、お湯の注ぎ方が異なります。台形ドリッパーを使用する場合、”の”の字を描くようにしつつ、お湯は少し太めに注いでいきます。お湯を注いでいくと、段々とドリッパー内部にお湯が溜まってくるので、コーヒー粉よりも水面が高くなりそうになったらお湯を止めて、水面が下がってきたらまた注いで、を繰り返し、欲しい量のコーヒーが抽出できたら、ドリッパー内のコーヒーが落ちきる前にドリッパーを外してドリップ完了です。
ドリッパーによってお湯の注ぎ方が異なるのは、それぞれ使用前提が異なるためです。台形のドリッパーは、お湯をドリッパー内部に留めてから徐々に抽出する、というのが基本コンセプトなので、お湯があえてドリッパー内部に溜まるように、太めに注ぎます。
円錐形ドリッパーの場合は、お湯の注ぎ方をダイレクトに受けてコーヒーを抽出する、というのが基本コンセプトなので、お湯を勢いよく注ぐとコーヒーが薄くなってしまいます。そのため、円錐形ドリッパーを使用してコーヒーをドリップする場合は、あまり勢いをつけず、お湯をゆっくり細く注ぐのです。
コーヒーのドリップ方法は様々
紹介したコーヒーのドリップ方法はあくまで一例で、良しとする方法は人によって微妙に異なると思います。色々なコーヒーの淹れ方を試してみて、自分が一番美味しいと思うコーヒーの淹れ方を見つけてみましょう。足がかかりとして、大手のコーヒー関連メーカーやコーヒーショップのホームページでもコーヒーの淹れ方を紹介しているので、これらを参照するのも良い勉強になると思います。
淹れたてのコーヒーを楽しむ
プアオーバーでコーヒーを淹れたら、後は飲むだけ。美味しいコーヒーはどう飲んでも良いですが、少しだけコーヒーの楽しむポイントにも触れておきたいと思います。
美味しいコーヒーはストレートで楽しもう
まず、なるべくストレートで飲むことをオススメします。理由は、それが一番コーヒー豆の個性を感じ取ることが出来るからです。ミルクや砂糖をコーヒーに入れてしまうと、それらがコーヒー豆の持つ香りや甘さを感じ取れなくしてしまいます。品質の良いコーヒーであればあるほど、その味わいは複雑で奥深いものになります。良いコーヒー豆を使用して淹れたコーヒーは、ストレートで飲むのが良いでしょう。
苦いのが苦手でコーヒーにミルクや砂糖を入れているのなら、浅煎りのコーヒー豆をチョイスしてコーヒーを淹れましょう。浅煎りのコーヒー豆で淹れたコーヒーは苦くないので、ミルクと砂糖は必要ないはずです。モカ系のコーヒーは浅煎りでも豊かな香りを楽しめ、苦味も少ないので、浅煎りのコーヒーでどれが良いか迷ったらモカを選んでみては如何でしょうか。
温度変化による味の変化を楽しむ
人間の味覚は温度が冷たいほど苦味を強く感じるようになるため、コーヒーの温度が下がることで味の感じ方が微妙に変わってきます。コーヒーの温度が下がると何だか美味しくなさそうなイメージがありますが、温かいうちはもちろんのこと、冷めたときの味の変化も楽しみの一つなのです。
ちなみに、コーヒーの味を象徴するもう一つの要素である酸味は、温度が変わっても感じ方はほとんど変わりません。そのため、例えば酸味のほうが少し強く、対して苦味が少し弱いコーヒーの温度が下がったとき、温かいときよりも冷たいときのほうが、苦味と酸味のバランスが取れているように感じるでしょう。
コーヒーの香りや酸味を楽しもう
缶コーヒーやインスタントコーヒー、チェーン店のコーヒーばかりを飲んでいるときは気が付かないのですが、”コーヒーは苦い”というのが本質ではありません。浅煎りのコーヒー豆を使用するサードウェーブコーヒーの影響もあるかもしれません、コーヒーの本来感じ取るべき本質は香りや酸味にあります。コーヒー豆がコーヒーノキという植物の種子であることを考えると、妥当でしょう。
コーヒーは、産地や品種によって香りも酸味も違います。特に香りは様々で、ベリー系の果実を思わせるものや、シトラスやレモンのような柑橘系の香りを感じさせるもの、独特な土臭さのものなど、コーヒー豆の種類によって多種多様です。これらを感じて楽しむことこそ、コーヒーの醍醐味と言えるでしょう。
自宅でコーヒーを淹れて飲むときは、苦味だけに気を取られず、そのコーヒーが持つ個性を感じ取ってみてください。2種類以上のコーヒー豆を用意しておいて、朝と昼で飲み比べてみたり、日替わりで飲んでみると、コーヒー豆の産地や品種による違いをしっかりと感じ取る事ができるのでオススメです。また、品質の良いコーヒー豆ほど香り高いものが多いので、より良いコーヒー体験にしたいなら、なるべくグレードの高いものを購入するのが良いでしょう。
自宅コーヒーの良いところ
自宅でコーヒーを淹れるために必要なことについて解説させていただきました。これからコーヒーを淹れてみようと思っていた人の参考になれば幸いです。また、これを機会に興味をもって頂けたら非常に嬉しく思います。最後に、自宅ならではのコーヒーの楽しみ方について触れておきたいと思います。
コーヒーを淹れる過程を楽しめる
美味しいコーヒーを飲むのが一番の目的ですが、コーヒーをドリップする過程にも楽しみがあります。挽きたてのコーヒー豆の香りや、コーヒー粉にお湯を注いだときにコーヒー粉がむくむくと膨らんでいく様子は、なんだか見ていて気分が落ち着きます。
お湯を注ぎ始めたときの香りも良いですし、コーヒー粉の中央に溜まるアクが壊れないようにお湯を注いでいくのも、ちょっとしたゲーム感覚で楽しめます。わずか数分の時間ですが、コーヒーをドリップしている時間にも楽しみが見つけられると思います。
自分の好きなコーヒーを楽しめる
お店で飲むコーヒーは、そのお店で取り扱っているコーヒー豆でドリップしたコーヒーしか提供されません。これはチェーン店やコンビニコーヒーに限らず、コーヒーの専門店であっても例外ではありません。”本日のコーヒー”という日替わりで変わるものはよくありますが、その他の標準のメニューはそうそう変わらないと思います。
しかし、自分でコーヒー豆を購入してきて自宅でコーヒーをドリップすれば、好きなときに好きなコーヒーを飲むことが出来ます。最初はお店で淹れたコーヒーのように上手にドリップすることは難しいかもしれませんが、練習すれば必ず上達します。自分でも美味しいコーヒーを淹れることが出来るようになったなら、自宅が自分のためのコーヒー専門店になったようなものです。毎日飲みたいコーヒーを飲みましょう。
コーヒーを飲みながら、趣味をアップデートする
コーヒーは、飲むと集中力を高める効果があります。普段の読書や勉強に取り組むときや、趣味を楽しむときにコーヒーを飲むと、物語により没頭できたり、勉強がはかどる効果が期待できるでしょう。美味しいコーヒーを楽しみつつ、嬉しい相乗効果も期待できるのです。
何もせず、コーヒーを飲む時間だけを楽しむのも良いですが、趣味等と一緒に楽しむと、思いがけない発見があるかもしれません。
あなたの自宅コーヒースタイルは?
初めてコーヒーを淹れるときは、手元に一切の道具もありませんし、とりあえずコーヒーを淹れることで精一杯だと思います。ですが、コーヒーを淹れることに慣れてきたら、コーヒーカップやドリップに使用する道具、抽出方法などに目を向けてみて、そこに自分のこだわりを持つと、より一層自宅でコーヒーをドリップすることが楽しくなるでしょう。
これから自宅でコーヒーを淹れてみたいと考えている方には、ぜひ楽しみながらコーヒーを淹れて欲しいと思います。そして、ドリップから飲み終えるまで、自分のスタイルに合ったコーヒーとの付き合い方を探してみてください。