コーヒーを美味しく淹れるためのお湯の注ぎ方
【2018-03-16】
コーヒーとお湯
お湯が無いと始まらない
インスタントであれ、コーヒー豆を挽いて淹れるコーヒーであれ、ホットコーヒーはお湯が無いと淹れることは出来ません。つまり、お湯はコーヒーの命の源と言っても良いでしょう。
コーヒーには欠かせないお湯も、通常の水道水を使用するか、浄水器に水道水を通した水を使用するか、ミネラルウォーターを使用するか・・・。美味しくコーヒーを淹れるために考えられるアプローチは色々ありますが、お湯そのものの品質だけではなく、その扱い方ひとつ変えるだけでもコーヒーの味わいは変わります。その扱い方というのは、お湯の注ぎ方です。
お湯の注ぎ方でコーヒーは変わる
プアオーバーにおいて、お湯の注ぎ方だけで抽出後のコーヒーの味わいは変わります。使用するドリッパーにもよりますが、お湯を勢い良く注げばその分コーヒーの抽出速度は早く、ゆっくり注げば抽出速度は遅くなります。抽出速度が変わればコーヒーの抽出にかかる時間も違ってきますので、その時間の差がコーヒーの味わいに変化をもたらします。
お湯の注ぎ方は、数値で表したりするのは難しいので個人差無く適切に表現するのは難しいのですが、おおまかに3パターンに分類されます。
お湯の注ぎ方
点滴
お湯をポタポタと、雫を1滴ずつ落とすようにして注ぐことを点滴と呼びます。点滴でお湯を注ぐ、と表現される場合にはダラーッっとお湯が連なって線になって落ちている状態ではなく、ほんの少し蛇口ひねったときに出てくる水の様に、雫としてポタポタと落ちているのをイメージして下さい。
殆どの場合、点滴というとお湯を注ぐときの最もゆっくりとした注ぎ方を指します。ポタポタと一滴ずつお湯を落とす事で、正確にかつ偏りがないようにお湯を注ぐことが出来ます。点滴は主にコーヒー豆の蒸らしの段階で使用しますが、蒸らしのときに点滴で注ぐことのメリットとしては、少しずつお湯を注ぐことでしっかりと蒸らしを行うことが出来るという点があります。
コーヒー豆の蒸らしのとき、お湯を注いで最初の1滴が落ちてくるまでお湯を注ぐというのがポピュラーかと思いますが、それまでに必要なお湯の量はコーヒー豆の使用量や重量、焙煎度によって異なります。そういった場合、お湯を注ぐ勢いによって最初の1滴が落ちるまでに必要なお湯の量は変わってきます。例えば、16gの中挽きのコーヒー豆に対して点滴でお湯を注いだ場合、16mlほど注いだ時点でコーヒーの最初の1滴が落ちるとした場合、ツーっと、細めでも点滴より勢い良く注いだ場合は13mlほど注いだ時点で1適目のコーヒーが落ちてきます。このような場合、前者は後者よりもコーヒー豆の内部にお湯が留められていて、しっかりと蒸らされているということが考えられます。
つまり、お湯を点滴でゆっくり注げば、お湯は挽かれたコーヒー豆の内部にとどまり、内包できるお湯の限界量になった時点でコーヒーが抽出されるようになりますが、勢いが強いと、勢いに押し出される形でコーヒーが落ちてきてしまう、という事です。そのため、コーヒーの蒸らしのときはなるべくゆっくり、点滴でお湯を落とすことが効果的と言えます。
しかし、点滴で丁寧にやりすぎてしまうと今度は蒸らしの時間が長くなってしまうので、これについては何度もコーヒーを淹れて良い塩梅を探っていくしかありません。
細く注ぐ
細く注ぐという場合は、ツーっと、お湯が連なった状態で、かつ勢いをつけずに注ぐことを指します。個人差はあるかと思いますが、注ぐお湯の直径の太さが1mm〜3mm程度の範囲であれば細く注ぐという表現の範疇でしょう。
プアオーバーでコーヒーを淹れる場合、細く注ぐことが基本になります。蒸らしの後、常に一定の細さでお湯をコーヒー豆の全体に偏り無く注ぎ続ける事が、美味しいコーヒーを淹れる為には大切です。点滴ではダメなのかと言うとそうではありませんが、点滴だとコーヒーを淹れ終わるまで時間がかかり過ぎますし、点滴と細く注ぐことを使い分けるとお湯の注ぎ方に偏りが出てしまうので、時間がかかりすぎず、勢いがありすぎず、常に一定の量のお湯を注ぎ続けられる注ぎ方という条件を考慮すると、細く注ぐというのが最も良い方法なのです。
ただし、実際にコーヒーを抽出する間、ずっと一定の細さを保ちつつお湯を注ぐのは非常に難しい事です。なかなか初めから出来ることではありませんので、何度もコーヒーを淹れてきた人のみが習得できる技術であるという事は頭の隅に置いておきましょう。
太く注ぐ
細く注ぐと表現できる範囲以上の勢いでお湯を注ぐ場合は、太く注ぐ、と言えば良いでしょうか。前述したように、基本的にコーヒーを淹れる際は細く一定に注ぐことが大切であるため、太く注ぐ、つまり勢い良くお湯を注ぐことにメリットはありません。そのため、太く注ぐという表現を用いることは無いのです。
ただ、太く注ぐ必要がある場合もあります。それは、大人数のコーヒーを一度に淹れる必要がある場合です。コーヒーを淹れるとき、1杯分でも4杯分でも、淹れる量に関わらず蒸らしからコーヒーを淹れ終えるまでの時間は3分以内が良いとされています。その場合、細く注いでいると3分ではコーヒーを淹れ終えることが出来ませんので、太くお湯を注ぐ必要があるのです。
このように、一度に淹れるコーヒーの量によっては太く注ぐことも必要になります。ですが、大人数のコーヒーを淹れる必要がある場合でも、可能であれば一度に淹れるのではなく数人分ずつに分けてコーヒーを淹れたほうがより正確に、丁寧にお湯を注ぐことが出来るので、美味しくコーヒーを淹れられるでしょう。
コーヒーポット
適当なコーヒーポットを選ぶ
一般的に使用されているやかんでは注ぎ口が広すぎるため、点滴や細くお湯を注ぐことは難しいでしょう。そのため、お湯を丁寧に注ぐためにはコーヒーポットが必要になります。コーヒーポットはコーヒーをプアオーバーで淹れる際、お湯を注ぐ為に使用する言わばコーヒー専用のやかんです。
コーヒーポットは小さいものは容量が300ml程度のものから大きいものは1L程度のものがあり、お湯の注ぎ口が細くなっていてコーヒーのドリップに最適な物となっています。コーヒーポットは安価なものから高価なものまで様々で、高価なものほど頑丈でお湯も注ぎやすくなっています。
細く注げるコーヒーポット
前述しましたが、コーヒーを美味しく淹れるためにはお湯を細く注ぎ続ける事が重要です。そしてお湯を細く注ぎ続けるためには、経験とそれなりの道具、つまりコーヒーポットが必要です。
これらのコーヒーポットは注ぎ口が特に細めになっていて、比較的簡単に細くお湯を注ぐことができます。カリタのコーヒー達人・ペリカン以外のポットはコーヒーポットを傾け過ぎてもお湯が出過ぎないため、初心者にも扱いやすいかと思います。
しかし、良い道具を使えばそれだけで点滴、細く注ぐことができて、安定してコーヒーを淹れられるというわけではありません。何杯もコーヒーを淹れて慣れること、道具を使いこなすことが大切です。
弘法筆を選ばず、その他コーヒーポット
その他にもコーヒーポットは多くの製品が世に出回っています。コーヒーポットにはこだわらない、どんなコーヒーポットでも使いこなせる!という人であれば、外観の好みや直感で選んで見ても良いでしょう。
HARIO (ハリオ) V60 ドリップ ケトル ヴォーノ コーヒー ドリップ IH 対応 800ml VKB-120HSV |
コーヒーを淹れることに慣れた人であればどんな道具を使用してもお湯をコントロールすることが出来るかもしれませんが、やはり手に馴染むものや長く愛用しているものが一番です。使いやすければ安価なものでも良いですが、長く使用するためには多少高価でも丈夫で良いものを購入する事をオススメします。
お湯の注ぎ方まとめ
お湯を制するものはコーヒーを制す
コーヒーはお湯の注ぎ方一つで美味しく淹れることも、不味く淹れることも出来ます。わざと極端に変なお湯の注ぎ方をしない限りは不味くはならないのですが、コーヒーを美味しく淹れるには意識して丁寧に注ぐということが必要です。
美味しいコーヒーとそうではないコーヒー、同じコーヒーでも飲むなら誰だって美味しい方が良いと言うでしょう。そのための一つの手段として、お湯の注ぎ方をしっかりと意識してコーヒーを淹れる事をオススメします。
お湯のコントロールには慣れが必要
ただし、はじめから思い通りにお湯を注ぐことは難しいでしょう。お湯を上手にコントロールするためには、手に馴染んだコーヒーポットとお湯を注ぐ経験が必要です。初めは上手くいかなくとも諦めず、少しずつお湯を狙ったとおりに注げるように経験を積んでいきましょう。