フレンチプレスを知ろう -フレンチプレスの淹れ方・選び方のコツ-
【2018-02-18】
【2018-09-29】
フレンチプレスを知る
フレンチプレスとは?
フレンチプレスはコーヒーの抽出器具です。縦長のガラス製、もしくはステンレス製の容器と、それにピッタリハマるフィルターがついたプランジャーと一体型のフタ、容器をセットするホルダー(ガラス製の場合)で構成されます。粗挽きのコーヒー豆を容器に入れ、お湯を注ぎ、プランジャーのついたフタをして数分待ち、時間になったらプランジャーを押し下げる、という簡単な操作でコーヒーを淹れることが出来ます。
フレンチプレスという呼称が一般的ですが、国によってはコーヒープレス、コーヒープランジャー、カフェティエール、カフェッティエラ ア スタントゥッフォ等、呼び方は様々です。
フレンチプレスの歴史
フレンチプレスの原型は1929年にミラノのアッティリオ・カリマーニという方によって作られて特許が取得され、1958年にそれを改良したものの特許をファリエロ・ボンダニーニという方が取得しました。その後フランスの工場で生産が始まったのをきっかけに、フレンチプレスが世界中に普及しました。
現在日本では、特にボダム(bodum)というデンマークのキッチン用品のメーカーのフレンチプレスと、日本のガラス製品メーカーハリオのフレンチプレスが多く出回っており、喫茶店から家庭まで、多くの場所で使用されるポピュラーなコーヒーの抽出器具となっています。
紅茶の抽出器具ではない
日本ではフレンチプレスは紅茶を淹れるもの、という認識もあるようですが、フレンチプレス自体は歴としたコーヒー用の抽出器具として発明されました。なぜ日本では紅茶を淹れるものとして扱われているのかというと、昭和の後期に日本の紅茶メーカーがフレンチプレスを紅茶を淹れるためのものとして宣伝したのがきっかけのようです。
現在でもそのような認識が広くありますが、その影響か前述したボダムやハリオによって、実際に紅茶用のフレンチプレスが製造・販売されています。
フレンチプレスでコーヒーを楽しむ
コーヒーの淹れ方
はじめに書きましたが、フレンチプレスでコーヒーを淹れるのは非常に簡単です。用意するものは
- フレンチプレス
- お湯
- 粗挽きのコーヒー豆
- カップ
と少なく、ペーパーフィルターも、ドリッパーもサーバーもコーヒーポットも要りません。フレンチプレスの場合は粗挽きのコーヒー豆を使用するため、お湯は沸騰したてのものを使用します。コーヒー豆はフレンチプレスの容量(大きさ)によって異なりますが、おおよそ
- 350ml:15g前後
- 500ml:25g前後
- 1000ml:40g前後
この程度を目安に使用します。勿論、何度も淹れていく中で自身の好みの分量を見つけられればそれがベストです。お湯とコーヒー豆が準備できたら、
- 空のフレンチプレスにお湯を注いで軽く保温し、お湯を捨てる
- 保温したフレンチプレスにコーヒー豆を入れる
- お湯をフレンチプレスの半分くらいまで、満遍なく注ぐ
- 30秒程度蒸らして、再度お湯を注ぐ。このとき、量はフレンチプレスのフタを閉めたときにフタに触れるギリギリ程度までにしておく
- フタをして、3分30秒程度(蒸らしの30秒を含めて全体で4分ほど)待ったらプランジャーをゆっくり押し込む
- カップに注いで抽出完了
ポイントは、コーヒーを淹れる時間はコーヒー豆にお湯を注ぎ始めてから4分程度を目安にすること、お湯の量はあまり入れすぎないことです。長時間お湯に浸した状態にしてしまうと、苦味や雑味が多く抽出される原因となります。また、蒸らした後にお湯を注ぐとき、容器いっぱいにお湯を注いでしまうと、フタをするときにコーヒーが溢れてしまいますので、フタをする分の余裕は残してお湯を注ぎましょう。最後のプランジャーを押し込む際に、ゆっくり押し込んで余計な微粉が巻き起こらないようにする事も大事です。
コーヒーオイルを楽しむ
フレンチプレスで淹れたコーヒーの特徴は何と言ってもコーヒーオイルです。ペーパードリップとは違いペーパーフィルターを挟まないので、コーヒーの持つコーヒーオイルがしっかり抽出されます。コーヒーオイルを含んだコーヒーは、コーヒー豆の持つ本来の豊かな香りと、口に含んだときの滑らかさ、甘みが特徴的で、まったりとした味わいとなります。
ハンドドリップで淹れたコーヒーと比較すると優しい味わいになるので、ゆったりとした時間を過ごすのにぴったりでしょう。
微粉に注意
少々気になる点があるとすれば、少なからず微粉が入ってしまうということでしょう。コーヒー豆を粗挽きにしても、やはり金属のフィルターの間を通り抜けてしまうくらいの小さな微粉も含まれてしまうので、それがコーヒーをカップに注ぐ際に一緒に流れ込んでしまいます。微粉は時間が経てば沈殿しますが液中に漂う時間もあるため、その際に少々飲み口に違和感を覚える人も、もしかしたらいるかもしれません。また、前述したように沈殿するので、飲み終わりにはたっぷりの微粉が待っているので注意が必要です。
フレンチプレスのメリット・デメリット
簡単にコーヒーが淹れられる
フレンチプレスの良いところは、何と言っても簡単に美味しいコーヒーを淹れられるところです。粗挽きのコーヒー豆とお湯とフレンチプレスでコーヒーを淹れることができ、ハンドドリップのように淹れ始めから淹れ終わりまで付きっきりでなくて良いので、コーヒーの抽出を待つ間に並行して他の事をする事が可能になるため、忙しいときにもぴったりです。
プアオーバーとは違った味わいになる
ペーパーフィルターを挟まないため、前述したコーヒーオイルを含んだコーヒー豆本来の味わいを楽しむ事ができます。同じコーヒー豆でもプアオーバーでコーヒーを淹れる場合、中挽き程度のコーヒー豆にお湯を注いで抽出することで、濃い目で切れの良いコーヒーになりますが、フレンチプレスで淹れる場合はプアオーバーよりも薄めでまったりとした、刺激が控えめなコーヒーになります。
大人数にも対応しやすい
フレンチプレスは大体350ml、500ml、1000mlという大きさの物があります。350mlで1〜2杯、500mlで2〜4杯、1000mlで8〜10杯分のコーヒーを一度に淹れることが出来るので、サイズ違いを用意しておくだけで、1人でも楽しめますし、大人数が集まってみんなでコーヒーを楽しむことが出来ます。
飲んだ後の片付けが少々手間
欠点を上げるとすれば、コーヒー豆を直接容器に入れているので、飲んだ後コーヒーのカスを取り出すことが少々面倒なのと、プランジャーのフィルター部分のパーツを分解して洗わなければいけないので少々洗い物が面倒という点です。
コーヒーのカスは、流しにそのまま流すとすぐに排水口のネットが詰まってしまいますので、別でビニール袋や直接ゴミ箱にコーヒーのカスを掻き出す必要があります。プランジャーのパーツは、しっかり隅々洗わないと、意外とコーヒーのカスが付着したままになってしまうので注意が必要です。
フレンチプレスを選ぶ
あたりハズレあり
コーヒーが好きでフレンチプレスを持っていない方や、これからコーヒー豆からコーヒーを淹れて飲もうとしている方には、是非フレンチプレスの購入をオススメします。ですが、フレンチプレスも各社が様々な製品を出している事もあり、良いものもありますが、イマイチ使い勝手の悪いものがあるのも事実です。一言で言うならフレンチプレスにも当たりハズレがあるというところです。
何個かフレンチプレスを使用してみて、個人的に感じた抑えておくべきポイントがいくつかあるので、そちらについてご紹介したいと思います。これから購入を考えている方も、フレンチプレスを持ってはいるけれど、いま使用しているモノにイマイチ満足していない方も参考にしてみてください。
選び方のポイント
フレンチプレスを選ぶ際に抑えておきたいポイントは以下のとおりです。
- フタが過剰に大きくないか
- フィルターは外しやすいか
- ガラス製かどうか
それぞれについて、詳しく説明していきたいと思います。
フタが過剰に大きくないか
まず、フタの大きさについてです。これは、フタが内向きに過剰に空間を占有していないかという事です。イメージが湧きにくいと思うので、イメージにしてみます。
イメージが適当なのはさておき、上のイメージですが、これはフタの占有空間が小さいものの場合です。左側のイメージの黒で描いている部分がフタの部分、赤の部分が今回問題となる容器の内側に入るフタの部分、グレーの部分が容器です。イメージの左の図は横から見た断面図で表現していますので、実際にはこれが円になっているという体で見て下さい。右の赤い円のイメージは、左のイメージの赤い部分のみを上から見たときの見え方です。
通常、フレンチプレスはこの形状のフタが多く、またこの形状であれば特に問題はありません。
問題は、こちらのイメージ左側のようにフタの占有空間が大きいものです。こちらは容器の内側に入る蓋の赤い部分が空洞ではないため、上から見たときにイメージ右側の様に見えます。つまり占有空間が小さいものに比べて、赤くなっている部分の分だけ多くフタが容器の内側の空間に干渉してしまっているのです。
容器の内側に入るフタの占有空間が大きければ、その分だけお湯が入らなくなります。350mlのフレンチプレスでコーヒーを淹れる場合、数十ml入るか入らないかの差はそれなりにありますので、このタイプのフタはできれば避けることをオススメします。
今回の例のように占有面積が大きいフタを使用した物は、大手メーカー製のメジャーなものにはありませんが、聞いたことが無いメーカーの製品ではたまに見かけることがあります。見かけで選んだらデザインだけでユーザビリティを軽視した製品だった、ということは良くあることなので、知らないメーカーの製品は注意して購入するようにしましょう。
フィルターは外しやすいか
次にプランジャーの先端のフィルターが外しやすいかどうかという点です。大体のフレンチプレスのフィルターはフィルターの留め具、メッシュフィルター、ベースフィルターの3つで構成されています。フィルターの留め具はネジ式となっていて、これに2種類のフィルターを重ねてプランジャーの先端に回して固定するのですが、そのせいもあってここにはコーヒーのカスがよく挟まるので、洗い物のときにこのネジ式の部分が外しやすいかは大事です。
この部分が取り外しやすいかという点については基本的には心配しなくてよいのですが、プランジャーの取っ手の部分もネジ式になっていて外れてしまう製品の場合は注意が必要です。というのも、プランジャーは細い棒なので、ネジ式で固定されているフィルターを外す場合、力を加えるためには棒の部分では力を加えにくいので、必然的にそれよりも大きい部分であるプランジャーの取っ手を持つことになります。このとき、取っ手が万が一回転してしまったり、ネジ式になっていたりすると、フィルター接続部分のネジに力が加わらずフィルターを外すことが出来ません。
だったら棒の部分を持って回せば良い、と思うかもしれませんが、やってみると分かるのですが、細い棒を素手で握り力を100%伝えるのは結構難しいものです。うまく手に密着しないので、手の中で棒ごと回転するのがオチでしょう。ふきん越しに棒の部分を持つなど、工夫すれば取り外すことは勿論出来ますが、すんなり取り外せることに比べたらストレスになるので、片付けの部分まで気になる、という方は気にしたほうが良いと思います。
ガラス製かどうか
最後に、ガラス製かどうかという点です。フレンチプレスはほとんどガラス製ですが、中にはスレンテス製のものもあります。ステンレス製の方が見た目が好きな方もいるとは思いますが、いざ使ってみて気になるのが、外から中身が見えないので、どれだけ注いだかわからなくなってしまうという部分です。慣れれば重さなどでも分かるようになるとは思いますが、使い始めは難しいと思いますし、ステンレス製になると重さがあるので、感覚も掴みにくいでしょう。一人で飲む場合は中身がどれくらい残っているかは気にしなくても良いのですが、人数が多い場合は気をつけたいところです。
ただ、その部分だけでステンレス製を選択肢から外すのも早計です。ステンレス製のフレンチプレスは保温性がガラスのものよりも高く、ガラスのように割れないので扱いやすいというメリットもあります。ですので、用途に合わせて材質を選択をするのが良いでしょう。
フレンチプレスの選び方については、上記の点を踏まえて選んでみるとコーヒーを淹れるところから片付けまで、ある程度満足のいく製品に出会えるかと思います。
おすすめのフレンチプレス
フレンチプレスは大きく分けると大手メーカー品とそれ以外に分類されます。ここで言う大手メーカーは、ボダムとハリオの2社です。世に出ているフレンチプレスの多くはこの2社のメーカーのものだと思います。初めてフレンチプレスを購入する方や特にこだわらない人は、このボダムかハリオのどちらかのものを購入することをオススメします。
これらのメーカーの物はフィルターやビーカーなどのパーツ単体でも販売しているので、一部のパーツだけ破損したり消耗した場合でも交換が可能です。
この2社の製品以外にも沢山フレンチプレスはあるのですが、良く分からないメーカー品は使い勝手の悪い物もあるので、最初にも書きましたがこだわりがない場合は有名な製品やレビューが一定数されているものを購入することをおすすめします。
触ってみてから買うのがオススメ
ボダムかハリオのフレンチプレスであれば現物を見ないでネットで購入しても失敗はしませんが、フレンチプレスを店頭で触れるなら実際に手にとってみる事をオススメします。特に、分解し易いかというところと、この記事内では初めて書きますが、金属の部品が鋭利でないかというところを見ておくと良いかもしれません。というも、ホルダーが金属で出来ている物は金属の端の部分で手を切ってしまったりする場合があるからです。
このあたりを見ておいて、問題がなければ購入しても良いかと思います。あとは実際に使用してみて、自分に合うかどうかチェックするのみです。
現在のコーヒーライフには欠かせないフレンチプレス
手軽で美味しい
フレンチプレスは手軽で、美味しくコーヒーを淹れることが出来る道具です。コーヒー豆からコーヒーを淹れる方は絶対に持っておいて損はありません。また、そうでない人でコーヒー豆からコーヒーを淹れることに興味がある人の最初の入り口としてもおすすめです。
コーヒーライフのアクセントに
余裕のある日はプアオーバーで、忙しい日はフレンチプレスで、とか、その日の1杯目はプアオーバーで、2杯目はフレンチプレスで、などシチュエーションに合わせてコーヒーを淹れる方法はいつくかあった方が飽きずにコーヒーを楽しむことが出来ます。また、同じコーヒー豆でも違う淹れ方をすることで違った味わいで楽しむことも出来ます。
まだフレンチプレスをもっていない人は、ぜひ一つ手元に置いておくことをオススメします。