コーヒードリッパー

適切な”蒸らし”を知って、コーヒーを美味しく飲む

コーヒーの蒸らし

コーヒーの蒸らし

コーヒーを淹れる所作

コーヒーを淹れるとき、どのようにしてコーヒーを淹れるかにもよって多少異なりますが、お湯を沸かして、コーヒー豆を挽いて、器具をお湯で保温して・・・といったように欠かせない手順があり、その中の一つに、コーヒーの蒸らしがあります。

初めてコーヒーを淹れるときは誰かに教えてもらったり、自分で調べたりしてコーヒーを淹れるかと思いますが、とりあえず教えてもらった通り/調べた通りに行っていて何故そのようにするのか、という事についてあまり知らない場合もあるかと思います。そのような場合、コーヒーを淹れる上での最たる謎がコーヒーを蒸らす理由ではないでしょうか。

コーヒーの蒸らしとは

コーヒーの蒸らしとは、コーヒーの粉の全体に行き渡るようにまんべんなくお湯を注ぎ、コーヒーの粉の温度が上がった状態で少し待つ事を指します。ご飯を蒸らすのと一緒ですね。事前にコーヒーの粉を蒸らす事によって、その後お湯を注いだときにコーヒーの成分が抽出されやすいようになります。

コーヒーを蒸らす理由が分かったところで、蒸らしの最適な時間やお湯の量についても見ていきましょう。

コーヒーを蒸らす時間

蒸らしと時間

コーヒーを蒸らす理由は分かりましたが、それではどの程度の時間蒸らしを行えばよいのでしょうか。コーヒーは蒸らした時間によって淹れたコーヒーの味わいにも変化が出てきます。蒸らしを行う時間はだいたい20秒〜60秒程度が主流で、蒸らしに取る時間が短いとコーヒーの味わいは薄く、長いと濃く抽出されます。

蒸らし時間が長くなるほど、特に苦味が強く出るようになります。短いと、相対的に苦味の少ないコーヒーになります。また、コーヒーの香りにも影響があり、蒸らしが長いと香りが飛んでしまうという事もあります。

コーヒーを蒸らさないと?

もし、蒸らしを行わない場合はどうなるのでしょうか。蒸らしを行わない場合、普通に味のあるコーヒーを淹れることはできますがコーヒー豆の持つコク等の個性が引き出せず、ちゃんと蒸らしを行ってから淹れたコーヒーと比較するとイマイチなコーヒーしか淹れることが出来ません。その為、蒸らしはちゃんと行うことを推奨します。

最適な蒸らし時間

蒸らしの時間については分かりましたが、それではどの程度の時間蒸らしを行うのが良いのでしょうか。これについては難しい問題で、飲むコーヒー豆の種類や焙煎度、個人の好みが絡んで来るので万人に向けた正解は存在しません。自分にとっての最適な蒸らし時間は、何度もコーヒーを淹れて確かめるのが良いでしょう。ただ、蒸らしが短ければ軽めの、長ければドッシリとしたコーヒーになりやすいという事を踏まえておくと、最適な蒸らし時間が掴みやすいでしょう。

蒸らしに使うお湯の量

最適なお湯の量

もうひとつ忘れては行けないのが、蒸らしに使うお湯の量です。プアオーバーでコーヒーを淹れる場合、コーヒーは淹れ始めが一番濃く、お湯を注げば注ぐほど徐々に薄くなっていきます。そのため、淹れ始めのコーヒーが蒸らしが終わる前にダラダラと落ちてしまうのはもったいありません。

しっかり蒸らした後にコーヒーを淹れ始めるためにも蒸らしのときのお湯の量をコントロールする必要がありますが、これは主にコーヒー豆の密度や挽かれた粗さと、お湯を注ぐ勢いによって異なります。まず、密度が大きいコーヒーで中挽き程度で挽かれたコーヒーの場合は、使用するコーヒー豆の量の重さの半分少々程度のお湯(コーヒー豆20gだったらお湯11mlほど)を静かに満遍なく注ぐと、少しコーヒーが落ちてしまう場合もありますが、比較的無駄なく蒸らす事が可能です。また、密度が小さく、中挽き程度で挽かれたコーヒー豆の場合は、使用するコーヒー豆の量と同量程度から超える程度のお湯(コーヒー豆20gだったらお湯20ml〜22mlほど)を静かに注ぐと丁度良いでしょう。

密度による違い

コーヒー豆の密度によって蒸らしに必要なお湯の量がなぜ変わるのかというと、同じ重さでも密度が大きい方が体積は相対的に小さくなるためです。例えば、2種類のコーヒー豆を重さで量り取って挽いたとき、同じ15gの豆でも密度が大きい方が体積が小さくなり、体積が小さいと、その分お湯を留めておけなくなります。

お湯を留めておけないということは、注がれたお湯はすぐに流れ落ちてしまうということなので、結果的に密度が大きいコーヒー豆は同じ重さの密度の小さいコーヒー豆に比べて蒸らしに使用するお湯の量は少なくする必要があるのです。

密度の見分け方

密度を厳密に調べることは難しいですが、相対的な見分け方は簡単です。それは単純に、コーヒー豆を挽いてみる事です。2種類以上のコーヒー豆を同じグラム数だけしっかり計量して取り出したら、同じ粗さで挽いてみて、挽いた後の体積の違いを見れば良いのです。同じグラム数でも、密度が大きいものは体積が小さく、密度が低いものは体積が大きくなります。

ここまでを考慮すると、密度が大きいとお湯の量は少なくて良い、というよりはコーヒー豆の重量ではなく挽いた後の体積によって注ぐお湯の量を決める、というのが正しいでしょうか。

ドリッパーによる違い

コーヒー豆の密度も重要ですが、ドリッパーによっても蒸らしに使用するお湯の量は少々異なってきます。例えばカリタのドリッパーであれば、20gの挽いたコーヒー豆に対してお湯を静かに注ぐと20ml〜22ml程度注いでもせいぜい少しコーヒーが滴下する程度ですが、これと同じ分量での蒸らしをハリオのドリッパーで行うと、多めにコーヒーが流れ出てきてしまいます。

これはドリッパー毎の形状の違いによるもので、特にドリッパーの穴の大きさが大きいほどお湯が流れ落ちやすくなります。これも踏まえて、使用するドリッパーに応じても蒸らしに使用するお湯の量を調整する必要があるでしょう。

お湯の量は量る

ここまで書いたように、蒸らしにおおよそどのくらいのお湯の量を使用すれば良いのかは数字で見ることができます。しかし、これを感覚だけで掴むのは難しいでしょう。目に見える形で、つまり量りを使用してお湯の重さを量るのが一番です。

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クッキングスケールにも種類は色々ありますが、コーヒーを淹れるために使用するのであればタイマー機能付きの物を選ぶのが良いでしょう。蒸らしのときも注いだお湯の量と蒸らしの時間を同時に測る事が出来るのでとても便利です。

お湯の注ぎ方

端には注がない

お湯の量も大切ですが、注ぎ方にも注意は必要です。これは蒸らしに限らずコーヒーを淹れる場合には気を付けなければいけないことですが、ドリッパーの端には注がない事です。これは、端に注がれたお湯はコーヒーの粉に触れる事無く側面を伝って流れ落ちてしまうためです。つまり、コーヒーを蒸らすこと無くお湯が落ちるだけになってしまうのです。

コーヒーの粉の全体が満遍なく蒸らされるようにお湯を注ぐのは大切ですが、端のギリギリの部分にはお湯がかからないように注意しましょう。

静かに注ぐ

これも蒸らしの際には大切な部分で、ちょっとのお湯の勢いの違いでコーヒーが落ちるまでのお湯の量が変わってきます。ポタポタと点滴でお湯を注ぐと25mlでコーヒーが落ち始めるとした場合、ツーっと細くお湯を注ぐと20mlでコーヒーが落ちてくる、と言った具合です。

ただ、点滴で蒸らしを行うのはけっこう大変ですし、その分蒸らしに時間がかかるので必ずしも点滴で行ったほうが良いとは言えないでしょう。ツーっと細く注ぐぐらいがベストで、勿論それ以上に荒く注ぐのはオススメ出来ません。

コーヒーの蒸らし方まとめ

蒸らし方のおさらい

アレコレ長くなりましたが、ここまで書いたコーヒーの蒸らし方をまとめると、

  • コーヒーを淹れるときは必ず蒸らしを行う。蒸らしの時間は20秒〜60秒がポピュラー。蒸らし時間が長いほど、苦味が強くなる。
  • 蒸らしに最適なお湯の量はコーヒー豆の体積によって異なる。同じ重さのコーヒー豆でも密度によって体積は異なる。
  • お湯は静かに、端には注がないようにしつつ全体に満遍なく注ぐ。また、コーヒーが落ちすぎないようにする。

以上のようになります。コーヒーの蒸らしにおいて上記の点を踏まえておくと上手く蒸らしを行うことが出来るかと思います。

蒸らしは美味しいコーヒーへの第一歩

蒸らしの効果は、コーヒーの味を良くする・ダメにするというよりも、どれだけコーヒーの個性を引き出すことが出来るか、という部分に関わってくると考えています。コーヒーを淹れるとき、殆どの場合でその入口となる蒸らしを上手に行い、コーヒーの味わいをより良いものにするのはコーヒーを淹れる人の腕にかかっています。

これを機に蒸らしについて自分の好みと相談し試行錯誤して、コーヒーをもう一つ美味しく楽しめるように取り組んでみては如何でしょうか。